腹黒ナースの毒ガス室

看護師が猛毒を吐き散らし、毒ガス抜きをする空間です。

新型コロナウィルス、臨床での出来事。

10代、コロナに罹患したのは1ヶ月以上前だった。再度発熱し発熱外来で2度のPCR陰性。
血圧低下、頻脈の所謂ショックバイタルで2日前に再度来院。CRPという体内の炎症を示す数値が高く、白血球は正常。頸部リンパ節が腫れていて、リンパ節炎でウィルス性敗血症。基礎疾患無し。


本日、意識レベル低下、動脈血酸素飽和度(SAT)低下で挿管。Aライン、CVカテーテル留置の重症で某大学病院の救命に転院搬送した。


インフルエンザでも同じようにウィルスがリンパ節に棲み付きリンパ節炎からウィルス性敗血症になることもよくあるので、コロナは怖いという無駄に恐怖を煽ることはするつもりは無い。
ただ、一度は回復して普通に生活していたのに、静かにリンパ節を占領して、あんな形で帰ってくるのには驚く。


チャンスが有るならワクチンを接種して欲しい、どんな年代も。このブログサイトにも、ただの皮膚病の画像を載せてワクチン副反応と書く悪質なブログを見かけるけど、反ワクチンのお里は赤い旗の方々だ。冷静に考えてデマに惑わされず行動して欲しい。コロナが特別に危険なウィルスだとは思わないが、マイコプラズマ同様に消えたと思っても静かに体内に棲み付き増殖してることを確認した。

心肺停止から蘇生、家族の声に反応あり

久々、救急やってて良かったなと思えた瞬間があった。


心肺停止で搬送されて来た男性、最初は対光反射無しで救急隊から情報を貰っていたけど、CPAからPEA、そしてROSCした。ドクターが瞳孔にペンライトを当てて確認し、対光反射あり!と声を上げる。それ聞いた瞬間のやってやったぜ感と来たら、医療ドラマ以上。みんな顔には出さないけどね。無表情で内心は、よーしよしよしよし!と思ってる。 


挿管されて呼吸機に繋がれているけど、患者の自発呼吸をアシストするモード。動脈圧を測定する為に手首の動脈にサーフローを留置してAラインを取り付け、搬送時の失禁を綺麗に清拭して病衣を着せる。整ったところで家族をERに入れると、奥さんが「お父さん!分かるー?!」と呼びかける。患者さん、僅かに頷く。
息子夫婦、孫も来て手を握ると握り返す反応あり。バイタル安定してICUに入院。
今、新型コロナウィルスを持ち込まないように、家族は病棟には行けないから、ERで暫しお別れになる。患者を病棟に送って来たあと、ERの前で奥さんが放心状態て座ってた。
パニックで色々と心の中を整理してたんだろうな。声をかけると、今までの健康診断の結果やら、普段の様子やら次から次へと喋る。
こういう時は忙しくても少し手を止めて聞いてあげないと、状況を飲み込んで次への行動が取れなくなる。この傾聴も看護技術の一つ。


もう、この時点で帰宅して冷たいビールをプシュと開たかったけど、まだまだ次から次へと救急車やってきた。疲れたけど、良かったよ今日は良く眠れそう。


焼きそば10人前、一人で食べ切ったチャレンジメニュー…焼きそば好きなので楽勝だった。

男の最期、女の最期

CPA(心肺停止)で搬送されてくる患者の殆どが、そのままお亡くなりになる。
心肺停止から発見搬送の時間と停止の原因によっては蘇生に成功することもある。けど、ほぼほぼ対光反射がなく人工呼吸機に繋がれて心臓が動く状態になる。
携わる身としては、自分ならそのまま逝きたいと思うが、残される家族はどんな形であれ体温が感じられる状態で居て欲しいんだろうな。


死後処置をして家族を呼び入れると、夫を無くした妻は何故か自分を責める。私がもっと早く気付いていたら…、無理矢理にでも病院に連れて行けば良かった…、等など。
そして最期に身に着けていた衣類をどうするか聞くと、大切に形見として持ち帰る。


妻を亡くした夫の反応は少し違う。人前で泣くことは少ないけど、死後処置中ERの外で待って貰うと、隅っこに行って俯き肩を震わせてる。 
形見に衣類を持ち帰ることは少ないけど、形見よりも存在そのものへの思いなのかな。


人の最期は生まれた時からプログラムされていて、そのプログラムを書き換えることは出来ないんじゃないかと、この仕事してて思う。
季節の変わり目は何故かCPA増えるので、また幾通りもの家族の喪失を見ていかなきゃいけない。
私は旦那より先に逝きたいな。